2013年7月11日 「下町ロケット」、観ました
WOWOWで放送されたドラマ「下町ロケット」を観ました。国内ドラマについて書いたのは、「スクール!!」以来だったかなあ、と調べたら、それは2年前でした。あまり観ていない国内のドラマですが、その数少ない作品は私自身は厳選されたものを(自分で厳選したもの、が正しい表現か)観ているつもり。ここにはUPしていませんが、「斉藤さん!」(今月、シーズン2が放送されますね)は実にリアルであり、斉藤さんのスカッとした生き方も観ていて楽しかったし、唐沢寿明主演の「メイド・イン・ジャパン」も現代社会の企業が抱える問題に切り込んだ秀作だったと思います。俳優陣も演技派揃いで楽しめました。感想をちょこっとここに書こうかなと思いつつ、そのままで過ぎてしまいました。
「下町ロケット」は放送当時は宣伝も随分していたし、池井戸潤の原作本も本屋さんの店頭で平積みになって置いてあって注目されていましたね。実は私は主演の三上博史は国内俳優の中の好きな人のひとりです。若い頃に流行っていたトレンディドラマも結構観ました。なので、ずっと観たかった作品のひとつなのです。それをやっと観て、「やっぱり、素敵」と再確認した瞬間です(また、始まった、と友人の声が聞こえてきそうですが)。
今回のこの佃航平役はものづくりで有名な大田区内にあるエンジンのバルブを作っている中小企業の社長です。それを聞いただけだと、三上博史には合わない役! と感じてしまいます。でも、観たら全く違っていた、その驚きが「やはり上手い俳優なんだ」と実感させます。多分、彼にしてはすごく抑えた演技。でも、落ち着いていて感情を爆発させるようなことの少ない佃には内に秘めたる情熱がある。宇宙に飛ばすロケットのエンジン開発という若い頃からの夢を実現させるために研究者として働いていた頃のままの情熱。その熱い思いは、観ていて十分伝わってきます。その彼にいらだちと戸惑いを隠せず、自分の気持ちを優先させた元同僚でもある離婚した妻。二人は今では子供のことでももめている。研究者に戻りたい気持ち、でも社長として会社や社員の生活を守られねばならない責任、その間で揺れる佃を中心に、物語は思わぬ方向へと展開。ロケットエンジンのバルブ研究を続け、新製品の特許を取っていたことから、佃製作所に大企業がその特許を売ってくれ、と申し出が……。一方、別の大企業からは特許侵害で訴えられ裁判に。
ものづくりにこだわる中小企業のあり方や行く末、大企業による企業買収や特許関係の利益追求、社内での対立などなど、様々な問題がこの物語の中にはありますが、一貫して語られているのは、「ものづくり」に対する技術者のこだわり、「夢」を諦めない強さだと思います。ものを作るということは、おそらく技術者にとって「生活」の糧でもあり、また同時に「夢」の実現なのでしょう。それはどちらが欠けても駄目。これは前述の「メイド・イン・ジャパン」でもそうでした。國村隼演じる技術者と唐沢寿明演じる営業マンは対立することはあっても、共通の思いは同じ。こだわりは自ら作ったものを売る「メイド・イン・ジャパン」なわけです。「下町ロケット」でも、特許を売るか売らないか、使用権として許可するのか、製品納入か、と話し合いを重ね、確実に儲けを手に出来る方法ではなく、製品納入の道を選びます。技術者の意地と誇りを貫く。100%の自信があるから出来ることでもあります。でも、その自信は積み上げてきたものがあるからこそ。
夢は大事ですね。池内博之演じる佃製作所の営業マンも最初は赤字を無くすためには特許を売ってお金を得ることが先決、と社長の判断に反対します。莫大な損害賠償を請求されている裁判に勝つためにもお金は必要、それはもっとも。しかし、佃社長の姿勢に彼も大企業ではなく、この小さい佃製作所に入社しようと決めた当時の自分の夢を思い出します。目先のことにとらわれすぎて見えなくなっているものを取り戻すんですね。それはまた佃自身も同じです。宇宙科学開発機構での元同僚であり、友人の本木から、会社を売って、ここに戻ってきて一緒に研究を続けよう、と誘われますが、それを断る。戻りたい気持ちはあるが、自分の夢はここでも実現できるとわかったんだ、と。
それにしても男は大変だ~、と再認識してしまいました。寅さんじゃないけど、「男はつらいよ~」。
では、女性陣は、というと佃の元妻の沙耶(水野真記)は、離婚して宇宙科学開発機構での仕事を続けています。その親友の神谷(寺島しのぶ)は弁護士で佃製作所の弁護をしたいと自ら協力を申し出る。親友の為よ、と言いつつも、実は佃を訴えた大企業の弁護士が自分がかつて勤めていた弁護士事務所の上司。その方針に疑問を抱き、退職して開業したという過去がある。二人ともキャリアウーマン。別にそれを強調したいわけじゃないんだろうけど、二人とも全く家庭的じゃない。独身であろう神谷はともかく、沙耶には自分勝手さが感じられて好きになれない。佃との離婚が、彼が実家の中小企業の社長になったからだなんて、「そんな将来の可能性もありと知ってて結婚したんじゃないのか?」と思わずにはいられない。「研究者だったあなたが好きだった」なんて、高校生の恋でもあるまいし、何を言い出すのか、この女は、とちょっと怒りを感じてしまったのは、私が三上博史のファンだからってことだけじゃなく、同じ気持ちを抱く女性もいますよね?
佃さんのような素晴らしい社長(しかもハンサム!)、会社思いの社員の人たち、技術者の人たち、こんないい会社はそうそうないです。ドラマだからかもしれないけど、うんざりする現代社会の中で、すっきりいい気分になれた作品でした。
こうした部品製造の中小企業や下請けの企業は、不景気や後継者不足といった問題がまだまだ続いていますね。「メイド・イン・ジャパン」を観たときにも感じましたが、日本の経済を、社会を支え続けてきたこうした小さい会社をもっともっと評価して、大切にすべきことをみんなが知って変わっていけたらいいですね。やっぱり、原作も読んでみようかなあ~。
ちなみに三上博史の作品については、そのうち「それが答えだ!」も取り上げたいと思っています。すごく好きな作品です。