第7回 ルイザ・メイ・オルコット
Louisa May Alcott(1832-1888) 作家
西部開拓時代に生きた前向きで進歩的な自立した女性
私の最も好きな作家の一人がこのオルコット。少女時代の出会いから、ずっと彼女の作品を愛読してきました。もちろん、「若草物語」が一番のお気に入り。こうした作品が作者の半自伝的要素を持った小説であるように、彼女の場合もそうです。大きく違うのは、ジョーはドイツ人のベア先生と結婚し、子供に恵まれた家庭を築きましたが、ルイザは生涯独身であったこと。また、ローリーがルイザが旅先で知り合った青年をモデルにしている点、そして南北戦争に行ったのは父ではなくルイザ自身であったことなどです。
ルイザの父はエマソン、ソローとともにアメリカ思想史に名を残すほどの人でしたが、理想主義の傾向が強く、時にはお金に困ることも……。けれど、4人の娘達は「物質的困窮と不幸は違う」と教えられ育つのです。
ルイザは家計を助けるために16歳の時には家庭教師などを始めますが、、エマソンの娘に書いた物語「フラワー・フェイブルス」を父が雑誌の編集者に見せたところ「お嬢さんは教師に向いています。作家にはなれません」と言われたことが作家になろうと思ったきっかけだと言います。
南北戦争に従軍看護婦として北軍に参加した後、その経験を書いた「病院のスケッチ」が好評となり、ロバーツ・ブラザーズ社のナイルズ氏に少女向けの作品を書いて欲しいと頼まれます。そして生まれたのが「若草物語」。氏は最初の12章を読んで「退屈な話」と言いますが、ルイザは落胆するどころか奮起して書き上げ出版します。その結果は既に私達の知っている通り。
常々、男に生まれたかったと言っていたというルイザは、竹を割ったようなさっぱりとした性格で、美人ではなかったけれど、背が高く均整の取れた、その気丈な性格が姿に現れているような印象深い女性であったと彼女の伝記作家チェニィは伝えています。
ルイザは姉と妹の幸せのために全身全霊を尽くし、総ての子供のための学校作りを夢見た父の願いを数々の小説の中で実現させ、1888年に「花物語」を出版したあと亡くなりました。父が死んで2日後のことでした。
彼女のエピソードをみると、気が強くて意志の強い女性という印象を受けます。負けん気が強いというのでしょうか。かといって、男勝りというわけではなく、自分自身を見極める目をちゃんと持っていたのではと私はその作品を読んでみて感じるのです。女性問題に関しては日本より進んでいると言えるアメリカでさえ、この時代の女性はまだまだいろんな制約や規制などがあり、しきたりも重んじられていたことでしょう。その中で自分らしく生きる強さ。私はそこに惹かれるものを感じているのかも知れません。(2000-11-13)
「若草物語」は、ハリウッドでは何度も映画化されている。それだけ愛されている作品なのだろう。日本で有名なのは、1933年にジョージ・キューカー監督、キャサリン・ヘップバーン主演の作品と、1949年にマービン・ルロイ監督で映画化され、ジューン・アリスンが主演した2作(こちらがエリザベス・テイラーのエイミー)。でも、私は1994年にジリアン・アームストロング監督で作られた「若草物語」が一番好き。その時代ごとにファンには思い入れがあるだろうけど、そういった意味で言えば、本を読んで持っていたイメージに一番ピッタリきたのが、私が生まれたあとに作られたこの作品と言えるかも。ウィノナ・ライダーは前者2作の主演女優に比べてお転婆なイメージはないけど、とても似合っていた。
追記:2018年にはアメリカでは、リー・トンプソン主演で現代版の「若草物語」が公開されているようである。日本で公開はあるのだろうか? 今話題はシアーシャ・ローナンがジョー役を演じるという映画化ではないだろうか? 現時点で発表されている配役はマーチ夫人をメリル・ストリープ(前出の1994年版ではスーザン・サランドンが演じた)、メグをエマ・ストーン、ローリーを注目の若手俳優ティモシー・シャラメというキャストだという。これはちょっとチェックかも、と私は今から公開が楽しみ!(2018/9/17)