シンデレラ

CINDERELLA 2015年アメリカ作品
監督: ケネス・ブラナー
出演: ケイト・ブランシェット(継母のトレメイン夫人役)、リリー・ジェームズ(エラ/シンデレラ役)、リチャード・マッデン(王子/キット役)、ステラン・スカルスガルド(大公役)、ソフィー・マクシェラ (ドリゼラ役)、ホリデイ・グレインジャー(アナスタシア役)、デレク・ジャコビ(王役)、ノンソー・アノジー(キャプテン大尉役)、ベン・チャップリン(エラの父役)、ヘイリー・アトウェル(エラの母役)、ヘレナ・ボナム・カーター(フェアリー・ゴッドマザー役


この作品は、公開当時にトップページで紹介した映画だ。単純に監督がケネス・ブラナーだったから観たいという単純なものだった。ストーリーは誰もが知っている定番のおとぎ話だし、主役二人は継母役のケイト・ブランシェットほど魅力的とは言えなかったが、シェークスピア俳優と言われ、監督としても評価の高い彼が、この有名な物語をどう撮るのか気になった。もちろん、「マイティー・ソー」の時に感じた不安はその映画をみることですっかり消滅したので、もうそこまでの不安は持っていなかったものの、このベタなまさに’シンデラレラ・ストーリー’、かわいそうな女の子が最後は素敵な王子さまと幸せになりました、の物語を彼が撮るのはやはり意外だった。

シンデレラの映画化では、紹介の時にも書いたようにドリュー・バリモアがシンデレラを演じた「エバー・アフター」が新しいシンデレラ像として公開当時かなり話題になった(私のこの作品の感想はそちらで)。今回は原作に忠実な映画化。そして、継母の事情という面も少なからず描かれている。幼い頃に読んだ絵本やアニメの影響か、継母=魔女なんていう印象ではあったが実はそんなんじゃなかったことがわかる。もちろん、魔女のように意地悪ではある、確かに。この継母役を演じるブランシェットが、これまたうまい!。 この人は特別好きな女優さんではないのだけれど、どんな役もやはり観ていて安心するので新作と聞くと観たくなってしまう女優さんだなあと実感。

ヒロイン役のリリー・ジェームズは、ドラマ「戦争と平和」(NHKで放送)でのヒロインでもある。こちらと違って、このシンデレラ役の方が先なので、初々しさが溢れ、少女から女性への変化などを見ることができて愛らしい印象。また、魔法で変身した時の青いドレス姿が美しい!

作品全体の雰囲気や魔法のシーンなど、従来のおとぎ話作品の映画化と比べて斬新さはないものの、この定番から逸脱していない作り、その中でのマンネリを感じさせないワクワク感が、ブラナー監督の手腕かなあとも思う。そして、あえて強調しすぎない家族の絆や人の心の裏側。いつも前向きでいられる強さ。それが、勇気と優しさだとヒロインが教えてくれる。それは、近年よく描かれている強い女性、全てにおいてアクティブに自分を主張する女性像があるべき姿と思われがちな女性像とは違うものだ。何もかもが平等であることを望んだり、他の誰かよりも優越感を得ることもでもない。

ラストでシンデレラは継母のことを「あなたを許します」と言って出て行く。実の娘ではない彼女にした仕打ちがどのくらい酷いことなのかを確定する術はないけれど、少なくとも見ている側からは、「意地悪なおかあさん」に映る継母を許すことは、シンデレラの勇気と優しさの表れのシーンだ。人を許すことは難しい。頭ではわかっていても気持ちは納得できないのが人というものだ。可愛らしいリリー・ジェームズの姿と役のシンデレラとが重なって見え、久々にスッキリとした気分、大好きな映画と言える作品であった。

余談:日本公開時、王子役を城田優、シンデレラ役を高畑充希が日本語吹き替えをして、主題歌の日本語版も二人のデュエットで話題になったが、改めてその映像を観たら、これまたはまってしまいました! 城田優の王子様、やっぱりかっこいい! 私は映画は字幕で観たけど、日本語吹き替えをもう一度見たくなってしまいました。(2018/02/08)

追記:義理の姉たちを演じているソフィー・マクシェラは、日本でも大人気となった「ダウントンアビー」で女中のデイジーを、ホリデイ・グレインジャーは「私立探偵ストライク」(J・K・ローリングが書いたミステリーとして有名な本のドラマ化。このストライク役は「マスケティアーズ」でアトスを演じたトム・バーク)で美人秘書のロビンを演じています。私はシンデレラを先に観ているので、あとで知ったのですが、となるとまたこの作品を観て確認したくなりました。「ダウントンアビー」も「私立探偵ストライク」もドラマコーナーにいずれUPしたいと思っています。(2019/05/28)

この作品は、2015年4月公開のチェック映画としてピックアップしました。

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