アンナと王様
Anna And The King 2000年 アメリカ作品
監督:アンディ・テナント
出演:ジョディ・フォスター(アンナ役)、チョウ・ユンファ(モンクット王様役)、 バイ・リン(タプティム役)
原作:アンナ・レオノーウェンズ
ミュージカル映画「王様と私」のリメイク。ユル・ブリンアーとデボラ・カーのイメージが強い作品だ。ジョディ・フォスターとチョウ・ユンファではやや違和感を感じたものの、見たら意外に(?)にもしっくりときていた。そのあたりは二人とも実力派と言われるゆえんかもしれない。ジョディはともかくチョウ・ユンファは私にはどうも「男達の挽歌」の印象が強すぎてこの王様役をどう見せるのか、あまり期待はしてなかった。だが、これはいい意味で見事に裏切られた。
厳格でしきたりを重んじるが、国の発展のためには近代化も必要と理解し、わが子達にもグローバルな目を持たせるために英国人教師を雇うなど進歩的な面も持ち合わせている王を威厳ももって演じきっていたと思う。もしかしてそれは、ユンファ自身の演技力だけでなく、ジョディの力も加わってのこと? なんて私は思ってしまったのだが、例えば、リチャード・ギアとの共演の「ジャック・サマースビー」やメル・ギブソンとの共演の「マーベリック」の時も感じたが、ジョディは共演俳優のそれまでとは違った魅力を引き出すような演技をしているのかもしれない。
男性が主人公の場合、相手役の女優は”引き立て役”の”花”だけの存在という言い方や場合もあって、まさにそうであるときもあったりするが、そして、この作品ではアンナが主人公なんだろうから、この場合にはあてはまらないかもしれないが、女優として飾るだけの”花”になっていないところがジョディの演技力、頭の良さを感じさせる部分なんだろうと思う。とにもかくにもユンファの王様役は素晴らしかったの一言の尽きる。
そして「王様と私」の時には二人のダンスシーンは見事で一番好きなシーンだったが、今回はそうしたワンシーンというよりも王様とアンナの微妙な関係の変化していく様が適度な緊張を保ちつつ描かれていて楽しめた。豪華な宮廷のセットも見所の一つと言えるだろう。
実在の人物の物語という点では、その史実の忠実性や事実性など様々な意見があるようだが、そして確かに白人の考えているアジア、白人から見たアジアの視点で描かれていることは否定出来ないが、映画としてシャムの王様と一人の英国人女性の出会いと別れの物語としてみれば、アンナの勇気と意志の強さ、そして相反するかのように思える柔軟さを持ち合わせている賢さに憧れや共感を感じることが出来るのではないだろうか。
今、見たら、「あっ!」と思うのはアンナの息子役を演じたトム・フェルトン。そう、あの「ハリー・ポッター」シリーズでマルフォイを演じた彼! ここでは、アンナの息子役を演じている彼のあどけない少年の姿の彼が見られるのはファンにとっては要チェックと言えそう。(2011/08/22)
左は1956年製作の「王様と私」