ワンス・ウォリアーズ
Once were warriors 1994年 ニュージーランド作品
監督:リー・タマホリ
出演:レナ・ウォーエン(ベス役)、テムエラ・モリソン(ジェイク役)、ママエンガロア・カーベル(グレイス役)、ジュリアン・アラハンガ(ニグ役)、タウンガロア・エミール(ブギー役)
原作:アラン・ダフ
マオリ族の一家の話。とは言っても、今は村を離れ、都会で生活している一家の話です。主人公のベスは王族の出身。でも、子育てに追われ、失業中の夫ジェイクの暴力に耐える日々。ジェイクはマオリ族でも奴隷の出身で身分違いの恋の果ての現在にやけくそになっているようにも見えます。毎日フラフラしている友人達と酒を飲み、夜毎自宅でパーティーを開く。そして、ささいなことでベスと口喧嘩をし、最後には殴るのです。ベスにはまだ彼に愛情があるのか、それとも愛する子供達の為と思って我慢しているのか、現状を変えようとする様子が伺えません。
日々繰り返される愛憎劇の中で何を見いだそうとしているのか? ジェイクの自分勝手さはひどいどころか嫌悪感すら感じます。ベスは、それもかつて自分の愛した男だから「こんなはずない。今は仕事がないから、こんなに苦しんでいるだけ」と思いたいのでしょうか?
もし彼が自分の妻や子に対する愛情をうまく表現出来ない男だったとしたら、暴力や自分が守るべき家族を壊してもいい理由になるものでしょうか?
ベスはジェイクに未練があるのか、愛情のかけらが残っているのか、結局彼を拒むことは出来ません。けれど、そんな感情に流された結果はどうだったのか。長男は家を出ていき、次男は非行に走って少年養護施設入り。長女は父親の友人にレイプされたあげく誰にも相談できずに自殺。
どんなことがあっても家庭内での暴力を許すべきではなかったと私は感じてしまいます。ジェイクの中でうまくいかないどんな理由があるにしろ、妻や子に暴力を振るうのは正しいとは言えない。またベスもそんな彼の態度に甘んじるべきではなかったのではないのでしょうか? けれど、そこは「惚れた弱み」なのでしょうか。
男と女の間は難しいですね。世間でよく言う、「夫婦のことは夫婦にしかわからない」というのは本当だなと実感してしまいます。私なら、どんなに愛した男でも、こうなったらきっぱり別れちゃうのにと思うのは、自分が今その立場ではないから言えることなのかもしれませんね。
ベスは愛する娘を失ってこれまでの自分の生き方を変えるべくジェイクに別れを告げます。失ったものが大きいほど立ち直れないのも事実かも知れませんが、また逆にだからこそより強くなれるとも言えるのかなとベスを見ていて感じます。毅然と立って去っていく彼女の姿には、一度は捨てたマオリ族としての誇りを持ち生きていこうとする新たな決意さえ見えて、そのラストがこの映画の救いのような気がしました。(2000/04/19)