美女ありき
LADY HAMILTON:THAT HAMILTON WOMAN
1940年 イギリス作品
監督:アレクサンダー・コルダ
出身:ヴィヴィアン・リー(エマ・ハミルトン役)、ローレンス・オリビエ(ネルソン提督役)、アラン・モーブレイ(ハミルトン大使役)、サラー・オールグッド(エマの母親役)、グラディス・クーパー(ネルソン夫人)
英国史上、同国民に英雄として知られているネルソン提督とその愛人ハミルトン夫人の恋の話。この映画、私の中ではずっと宿題になっていた作品の1本である。公開当時は、主役の二人同様に演じた ヴィヴィアンとローレンスもダブル不倫状態だったことでいろいろ話題になったとのこと。このタイミングでこの映画!、というのは偶然なのか、狙ってのことなのか気になるところではあるが、だからこそ役に気持ちがより入ったとも言える!?
ストーリーは史実に基づいているらしいが、二人の恋を中心に描いているのは確かだ。海上での戦闘シーンや軍事政治的会議等の場面もあるものの、ロマンスものと言っていいだろう。
何と言っても二人の美しさ、とりわけ ヴィヴィアンの美しさといったらため息ものである。衣装も素晴らしい。その分、冒頭とラストの老いたエマの姿は痛々しい。まるで別人のような姿は、ネルソンを失ってからの彼女への報いのようにも見える。というよりもかなり自分勝手に生きてきた彼女の人生への支払いとでもいうべきか?
史実の彼女は私の好きなタイプではない。好きに生きたから、その代償は払うべきと感じてしまう。だが、もって生まれた美貌を活用して生きた彼女の生き方を否定するのも違うだろう。そんなことを思いながら観たが、でもやはりちょっと自分勝手なエマは友達にはしたくないかも、とも。
また、誰もが感じるであろうが、今となってはヴィヴィアン自身の人生とも重なってしまい、観る側もエマの痛々しさが本当に辛くなってくる。演じたヴィヴィアンは当時は自分の後の人生を想像もしていなかっただろうから、完全に演技とは言っても晩年のエマは若い頃と同一人物には見えないくらい落ちぶれている(ヴィヴィアンが落ちぶれたとは言わないが、真に愛する人を失った晩年の姿はエマと重なるものがどうしてもあるだろう)。とすると、やはりヴィヴィアンの演技力、綺麗なだけの女優ではなかったとの証明でもあるのかなあ……
映画ではハミルトンのことはあまり描かれていなかったが、エマをどう思っていたのだろう? 史実の上でも行動を共にしたりしていたとされる奇妙な三角関係は周囲からは好奇の目もあったのでは? と想像するが、”国民的英雄であるネルソン提督をごひいきにしているハミルトン夫妻”で済まされていたのか気になるところ。ハミルトン自身の思いも映画の中では少しだけ語られていたが、美しく若い妻を持った高齢の男性が抱く気持ちはおそらく昔も今も同じだろうし、複雑さも少なからずあったんだろうなあ、とも思う。同時に、まるで蚊帳の外的な立ち位置になってしまっていたネルソンの妻はどんな気持ちだったんだろう? とまたまた歴史上の人物の話となると脇役の気持ちが気になって仕方ないのであった。(2014/12/14)