トゥルーマン・ショー

The Truman Show 1998年 アメリカ作品
監督 ピーター・ウィアー
出演 ジム・キャリー(トゥーマン・バーバンク役)、エド・ハリス(クリストフ役)、ローラ・リニー(メリル役)、ノア・エメリッヒ(マーロン役)、ナターシャ・マケルホーン(ローレン/シルヴィア役)


生まれたときからずっと24時間TVで自分の生活が放送されつづけていた! 妻も両親も近所の人も親友もみんな役者で、何が本当なのかわからない、この奇抜な発想には驚くものがあるけど、考えられないことではない。視聴率のためにはマスコミがこのくらいのことを考えて、やってのけてもおかしくはないように思う。

トゥルーマンの人生はこうだ。父を嵐の海で亡くすというトラウマにとらわれているはいるものの、世界一幸せな男と信じていたトゥルーマン。だが、少しずつ周囲が変であることに気づいて真実を突き止めようとする。時にコミカルなその様子は、これまでのジム・キャリーのコメディタッチな演技を伺わせるけど、やっぱりは内容はシリアス。ある意味作られた人生であるトゥルーマンは「本物」や「真実」を知って本当の自分へと歩き出そうとする。

この大掛かりなプロジェクトを企画し、動かしてきたプロデューサーのクルストフは、仕事の一面だけじゃなく、トゥルーマンに対し父親的感情も抱いている。赤ん坊のときから見ていれば、それは人として自然な感情かもしれない。そして、子供の旅立ちをついに見送るときがくることも……。

ラストではスタジオを出て行くトゥルーマンの姿で終わる。彼はTVの中ではなく現実の社会へと出て行くことを選んだ。その後どうなったのだろう? 本当に現実の世界で生きていけるのか? そんな疑問も湧いてくるが、どうなったのかということよりも、自らの足で自らが信じる真実の道を歩いていくことを選んだことが重要だ。

この話は自分の意志に関係なくTVドラマの主人公にされていた男が、真実を知って一般社会で生きることを選ぶ話になっているけど、形こそ違うものの、これは私たち一人一人の生き方でもある。家族という守られた世界から旅だって世間の荒波の中で大人として責任を果たしつつ生きていかねばならない私たちは、スタートラインにたったときはスタジオを出て行くときのトゥルーマンと同じだ。果たしてトゥルーマンのように潔く出て行けるものだろうか?

それは半分作られた人生を生きてきたトゥルーマンをTVドラマとして見て一喜一憂した一般聴衆と同じである私たちには疑問だ。メディアに左右される私たちは、時になんて愚かな存在になってしまうのか考えさせらるものがあった。

ところで期待のエド・ハリスは出番が少なくてちょっとがっかり。文字通り、ジムがずっと画面に出ずっぱりで、これでアカデミー賞狙いだという噂もあったかと思うが、「マスク」や「エース・ベンチュラ」の印象が強い彼のシリアスものはどう映るのか。私は悪くなかったと思うのだが、エド・ハリスファンとしては、彼との絡みももっと欲しかったかなあ?……(2010/02/15)