幸せの1ページ
NIM’S ISLAND 2008作品 アメリカ
監督:マーク・レヴィン、ジェニファー・フラケット
出演:アビゲイル・ブレスリン(ニム・ルソー役)、ジョディ・フォスター(アレクサンドラ・ローバー役)、ジェラルド・バトラー(アレックス・ローバー/ジャック・ルソー役)
原作: ウェンディー・オルー『秘密の島のニム』(あすなろ書房刊)
カナダの児童文学作家ウェンディー・オルー原作の映画化ということで、この作家を知らなかったのでちょっと検索してみたら、日本でも翻訳が出版されていた。年を取っていくうちに本を読む時間が減って、こうした作家達のこともノーチェックだったことは少し反省しなければ、と感じてしまう。児童文学の、そしてジュニア向け小説の作家もどんどん新しい人達が出て、新しい作品が出ているんだよなあ、と。ハリーの生みの親ローリングだけがジュニア小説を書いているわけじゃないんだものね。映画を観て、原作を読みたくなってしまった作品。
先に映画(ドラマ化も含め)を観てしまうと「本はもういいや」となってしまう作品と逆に原作を読みたくなる作品とあるが、この映画は本の方がもっと面白いかな、と思う。
映画がものすごく面白かったか、というと「ものすごく」が付くほどではないにしろ、それなりに楽しめた。先も読めるし、ちょっとドタバタ風でもあるし、すべてがうまくいきすぎ感も漂っている。でも、それは家族で安心してみられる夏休み映画と思って目をつぶれば気になるほどでもない。というか、単純にちょっとハッピーな気分になりたい気分で観れば、「人生、そんなにうまくいくかな?」と思いつつも最後には「よかったね」と思って観終われる、そんな気がする。
つっこみどころはいくつもあるのだが(それはこの映画に限ったことではないけど)、ニムとアレクサンドラの新しい一歩のお話、と思えば、視点も少しは変わるのではないだろうか。
主人公の少女ニムは海洋生物学者の父と二人、南の無人の孤島に住んでいる。母が死んでからずっとそうだ。パパ大好きの元気いっぱいニムは、探検家アレックス・ローバーが活躍する冒険小説の大ファン。かっこいいアレックスに憧れている。その小説を書いている人気女流作家のアレクサンドラ・ローバーは、本はベストセラー、主人公のアレックスも大人気なのに、潔癖症の上、ひきこもりで家の前にある自分のポストに行くことすら出来ない。宅配が来ても配達人と会うことすらままならないほどの重症だ。
このアレクサンドラがニムを助けに南の孤島へ向かうことになる。ニムは父が海に出たきり戻らず、ひとりぼっちで、しかも怪我をしている。嵐が来たので、父も遭難したんだろうと察しはつくものの、アレクサンドラを小説のヒーロー、アレックスと思い込んでいるニムは、まるでその冒険小説の中にいるかのように助けを求める。お転婆な元気少女でもこのあたりは女の子っぽくて可愛い。そのあたりは演じるアビゲイル・ブレスリンがうまく見せてくれる。
引きこもりの小説家を演じるのはジョディ・フォスターだ。インテリでしっかり者、「自分」を持っている意志の強い女性という印象の彼女はこれまでも多くの「強い女」を演じてきて評価も高い。私も彼女のそうした作品は好きだ。先日観た、「おとなのけんか」や「ブレイブワン」、「フライトプラン」(まだサイトにはUPしてませんが)など、どれも弱々しい女性ではなく、おっちょこちょいでも人に会えないほど内向的でもないし、自分を曲げない強さはスゴイと思う。
でも私は「マーベリック」で見せたようなコメディエンヌのジョディの方が好き。このアレクサンドラもそう。自分の世界にこもっている彼女が必死に自分と外界と戦い一歩を踏み出す。そして、うまくいかなくても、怒っていても、時には嫌になってやめようかと思っても、その上かっこ悪くてめちゃくちゃでも先に進もうとする、その強さは他の作品の女性達と同じ。
新作が書けなくてスランプ気味のアレックスに飛び出すきっかけを与えた少女ニム。小さなことが自分を変える大きなことになることもある。それは数日間一人で過ごしたニムも同じ。守りに入りがちな大人に行動を起こすことの方が大事なときもあるよね、そう気付かせてくれるのだ。
演技に定評のあるジョディとアビゲイルに挟まれた感じのジェラルド・バトラーはアレックスとニムの父ジャックの二役を演じている。ジャック役ではニムの大好きな素敵なパパの姿、アレックス役ではニムが小説のシーンを想像する中で登場したり、自分の生みの親アレクサンドラの心の声として突如彼女の前に登場するといったおいしい役所だったのかもしれないが、残念ながら二人の女性の間でちょっと霞んでしまった感じ。私は観ていない作品が多い俳優なのだが、アレックス役で冒険映画もいいかも? なんて気にも……。ハードな作品が多い印象の彼の「スマイル・アゲイン」はちょっと観たいなあ、と思っていたところだが、まずは評判の「300 スリーハンドレッド」を観るべきか?。(2014/08/28)