バーン・ノーティス 元スパイの逆襲①
このドラマについて
「24 TWENTY FOUR」、「プリズン・ブレイク」に続いてフォックスが送り出すドラマとして宣伝されていたこの番組。「24 TWENTY FOUR」では、自らの命を顧みず、家族さえも犠牲にして、24時間走り続けてアメリカを救う男ジャック・バウアーを、「プリズン・ブレイク」では、愛する者の命を救うために、知識を総動員して計画を練り自らの人生を投げ出した男マイケル・スコフィールドを、男の揺るぎない信念を通して見せてくれた。
では、「バーン・ノーテイス」で登場するマイケル・ウェスティンなる男はどんな男なのか。彼は、体中傷だらけになりながら、時間との勝負に頭をフル回転させて、敵や精神的ストレスと闘って来た前者の二人とは違って、もうちょっとのんびりしている。非情で過酷な世界に生きるスパイであったことは、のんびり人生とは言えないが、故郷のマイアミから出られない状況であること以外は、さほど制限はない。
そうは言っても、誰かが彼をはめて、任務中に突然解雇を言い渡されたのだ。それが誰なのかも理由もわかならい。スパイを無理やり引退させられ、困った家族のいるマイアミに缶詰にされた真相を探るべく、マイケル・ウェスティンは、しがない探偵稼業をはじめることになる。果たして、そこにはどんな陰謀が隠されているのか?
追記:この記事を書いたときはアメリカで第3シーズンを放送中でしたが、現在は最終シーズンの第7シーズンまで放送はされて終わっています。民放では全部は放送していなかったかもしれませんが……。途中の2011年にはサムの現役時代の話も制作されました。「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲:サム・アックス 最後のミッション」です。当サイトでは現在は、第5シーズンまでしか更新していませんが、ゆくゆく第6、第7シーズン、そしてサムの話もUPしていきたいと考えています。(2019/08/18)
前評判は、「プリズン・ブレイク」ほどではないにしろ、結構良かったと思う。出演者は日本ではまだそれほど知名度の高い俳優達ではない。知られているのは、LuxのCMに出ていたガブリエル・アンウォーくらいか…。とは言っても「プリズン・ブレイク」でも、メインキャストは日本ではほとんど知名度はなかった。それでも爆発的ヒット。私の期待度は「プリズン・ブレイク」のようなワクワク感はなかったが、そこそこ期待はしていた。ところが、ふたを開けてみたら大当たり! この路線は大好きな、そして私のドラマ人生の中で尤も重要な位置を占めている「冒険野郎マクガイバー」と同じ。「特攻野郎Aチーム」と同じ。
息つく暇もないハードなアクション続きの前2作のあとにこのちょっとノー天気な雰囲気漂う主人公マイケル・ウェスティンは、「ゆるっとやってみるか」と事件を解決していく。その過程でマクガイバーのように手近な道具を使って、武器を作り、スパイする。作る時の説明的なモノローグもマクガイバーと同じだ。目新しさはないが(スパイ小道具を手近なもので作る展開は新しい?)、懐かしさ漂う手法に久々のウキウキ感が……。また、彼を取り巻く個性的な面々も魅力的だ。
元カノのフィオナ。彼女は元IRAの工作員で、ナレーションでは喧嘩っ早い、と言っているが、かなり過激な女性だ。二言目には「ぶっ殺しちゃう?」、と言っては華奢な体に似合わないショットガンを撃とうとしたりする。マイケルがある日突然消えた、という不本意な別れ方をしたせいか、それともやっぱりぞっこんなのかフィオナは未練がましくマイケルに付きまとう。でも、マイケルはそれほど嫌でもなさそう。二人の展開はどうなるのか?
マイケルの探偵家業を手伝うのは、元同僚のサム。今は引退してマイアミで酒と女の日々、明らかに生活習慣病だろうと思わせるメタボな体型でもありながら、金持ちの彼女のヒモ生活で気ままなに暮らしている。マイケルの様子を探るようにFBIから接触を受けたこのいい加減そうなオヤジは、FBIにはのらりくらりと差し障りのない情報を与えつつ、マイケルの要求には応えてかつての有能ぶりを想像させるが、本当はうるさくつきまとうFBIとマイケル、どっちの味方なのか?
さらに問題ありのマイケルのママと弟。ママは何かとマイケルを電話で呼びつけるうるさい母親。その上、始終タバコをプカプカふかしている。弟のネイトは怪しげな仕事を繰り返し、借金を作り、問題を起こしているらしい。困った家族だが、マイケルは頼まれると結局助ける羽目になる。亡くなった父との確執を間に、母親との弟との関係は修復されるのか?
マイアミから出ることもままならず、真相を追究するマイケルはスパイだが、ボンドのようなかっこよさではない。華麗で豪華な道具もセットもない。ロケーションはマイアミだから美しいし、美女やサービスショット的(男性ファンへ向けた)なシーンもあるのでリゾート雰囲気は楽しめるが、そこはやはりテレビ。007映画的なスリルやスパイと美女のお楽しみはないのだ。でも、正統派二枚目とは言い難いマイケルのスマートなやり方や悪人をとっちめる様子は小気味いい。アクションだけど、今時の映画やドラマのように血のりべったり、見るからに痛そう、苦しそう、怖そうなシーンは出てこない。しかも、マクガイバーやAチームのように死者は出てこないのだ。
「24」、「プリズン・ブレイク」と痛そうな番組が続いた後の死なないアクションドラマ。物足りない? と思わせつつも観たらはまる、それを後押ししているのは絶対に吹き替え。映画好きは字幕にこだわる人もいるだろうけど、このドラマは絶対に吹き替え版がおすすめ。マイケルの声には今やルパン3世と言えばこの人、とも言える栗田貫一さん、フィオナには雨蘭咲木子さん(ガブリエル・アンウォーには合わないと思っていたが、フィオナには合ってる!)、サムには江原正士さん。栗田さんのせいではないんだろうけど、セリフだけ聞いていると「ルパン3世」を観てるような気分にも。今イチオシのスパイドラマ! 地上波放送が日本テレビで始まっているので、「プリズン・ブレイク」同様、是非ラストまで放送してほしいもの。アメリカでは第3シーズン放送中。(2010/03/11)
出演者とキャストについて
ジェフリー・ドノバン(マイケル・ウェスティン役=声:栗田貫一)
マイケルを演じるジェフリー・ドノバン。日本では馴染みは薄いが、クリント・イーストウッド監督の「チェンジリング」での警部補役でその名は知られたのでは? 1996年の「スリーパーズ」にも出ていたということなので、本国では俳優としての活動歴は長いのかも。「チェンジリング」では、マイケルとは全く別のキャリヤ面子を気にする警部補役で、「バーン・ノーティス」の中で時々見せるニヤリとした笑いは全くなかった。印象は強く残ったけど、やはりマイケル役の方が、はまってる? 常にヨーグルトを冷蔵庫に常備してしょっちゅう食べている(もちろん、体も鍛えている)スパイらしからぬ、でも仕事はきっちりのこの役がジェフリーの当たり役となって、今後の彼の映画界、テレビ界両方での活躍が期待される。Starlight Cafeへ。
ガブリエル・アンウォー(フィオナ・グレナン役=声:雨蘭咲木子)
英国出身。マイケルの過激な元彼女フィオナを演じるガブリエル・アンウォー。日本では絶対にシャンプーLuxのCMの印象が強いと思う。このCMのシリーズはいつも素敵な女優たち(私が覚えているのは、キャサリン・ゼダ・ジョーンズ、アン・ハサウェイ、ジェニファー・コネリーなどなど)が長い黒髪をなびかせゴージャスに見せてくれていた。ガブリエルもその一人。でも、フィオナの印象は全然違う。可愛いところもあるけど、マイケル一筋の一途さもあるけど、したたかでもあり自分をちゃんと持っている。ガブリエルの印象と違うと思うフィオナもそんな部分がこれまでの彼女の出演作品で演じられてきた女性たちと共通していて、素敵に見えるのかも。はじめて観たのは、「ワイルド・ハート/彼女は空を翔けた」。今、思うとまだ少女のあどけなさ残るヒロインのイメージとガブリエルはぴったりだった。その後の注目されたアル・パチーノとの共演の「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」では、成長した女性の魅力をほんの少しの出番で印象付けた。やせっぽちでグラマラスな女優ではないが、とても魅力的な女性だと思う。
ブルース・キャンベル(サム・アックス役=声:江原正士)
現役の頃はかなり有能だったことをにおわせつつも、現在は大好きな女性と酒に囲まれ、お気楽な生活を満喫しているサムを演じるブルース。劇中、お酒ばかり飲んでいて、それってどうなのか?とも感じるが、だらしなさそうでも仕事はきっちり(たよりなさげで、でもそうでもない、そんな雰囲気が江原さんの声ともマッチ!)だから、マイケルもOKしてる? 彼はB級映画にはたくさん出ていて、その地位は確立している、と書かれているので、映画界では知る人ぞ知るって俳優? どこかで見た顔、と思うあたりは、それって、事実かな、と思う。
シャロン・グレス(マデリン・ウェスティン役=声:谷育子)
セス・ピーターソン(ネイト・ウェスティン役=声:宮内敦士)
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