フリンジ①

FRINGE 2008~2013年 アメリカ

このドラマについて
 J.J.エイブラムス版Xファイル、と言われているこの作品。SFやミステリー、謎解きが好きなら、気になる番組。「24」や「プリズン・ブレイク」、「バーン・ノーティス」といったヒット作を送り出してきたFOXのSF作品だ。FOXのSFと言うと私には「ミディアム 霊能捜査官アリソン・デュボア」がすぐに思い浮かぶけど、「フリンジ」は「アリソン~」とは全く違って、宣伝のように「X-ファイル」的。となるとやはり政府の陰謀絡みで主人公が振り回されるのか、と二番煎じの番組を想像するが、観てみたらすっかり引き込まれてしまった。

「X-ファイル」は好きな番組である。私にしては珍しく主人公のモルダーとスカリーの二人ともが好きなキャラクターだと言ってもいい。モルダー役のドゥカブニーが降板後に登場したドケットもモニカもとてもよかった。それだけに二番煎じの番組では期待できない。でも、どうやらそうではなかった。

「フリンジ」は、やはり巨大な謎を解き明かすために主人公のFBI捜査官オリビア・ダナムが様々な困難や捜査妨害を乗り越えて真実を追い求めるドラマだ。オリビア自身、子供時代のつらい過去を背負い(モルダーのように妹を宇宙人に誘拐されるといった超常現象的なものではなく、現在の風潮を伺わせるような家族の問題)、ドラマが進展していくうちにその過去が、更なる秘密を持っていて今捜査をする事件に繋がっているのでは? と思えてくる。

メインの登場人物は多くはないが、物語の展開はやや複雑で化学の専門的な部分も会話の中には多々ある。基本的に一話完結だが、大きいところでは繋がっているので、順番に観た方が楽しめる。徐々に明らかになっていく登場人物達の秘められた過去はどう繋がるのか? 偶然と思えることも実は偶然ではない、と思えてくるあたりも今後が非常に気になるところだ。
日本ではDVDのレンタル、販売はされているが、テレビ放送は「Super! drama TV」で2010年10月23日(土)に先行放送。放送開始は11月23日(火)から。

追記:この番組は日本でも既に終了しています。多分、全話放送されたはず。私はスーパードラマチャンネルで最後まで観ました。シリーズごとのページにして詳しくご紹介したいところですが、それはまた後日、ということで。とにかく面白いドラマでした。内容はどんどん複雑になっていくので間をあけずに続けての視聴がおすすめです。オリビアとピーターの関係がやはりドキドキ展開で見られたのもよかったし、ヒロインのオリビアは個人的には好きなタイプなので(ドラマでは女性が主人公の作品はあまりそのヒロインのことが好きではないことが多い私ですが、オリビアは「X-ファイル」のスカリー、「エイリアス」のシドニーと共に私の好きなヒロインの一人です)、ドラマを観ながら応援してしまいました。絶対にピーターと幸せになってほしいよね~!と。(2019/09/14)


物語の展開
発端:オリビアは同僚のスコット捜査官と密かに交際中。捜査官同士の交際は禁じられている。だが、とても充実していた。その逢引き中に事件は起きる。それはオリビアがこれから巻き込まれていく(実はもう巻き込まれていた?)大きな謎の事件の始まり。二人は共に旅客機627便の乗客乗務員全員の謎の死、という事件を捜査することになる。捜査の指揮を執るのは国土安全保障省のブロイルズ特別捜査官。そして、容疑者の一人と思われる男を追跡中にスコットはオリビアの目の前で爆発に遭い瀕死の重傷を負う。

その症状と事件の共通性を見出したオリビアは、隔離施設に収容されている科学者ウォルター・ビショップ博士を退院させることに。それには博士とは疎遠になっていた一人息子のピーターを探し出して説得し、父親の後見人になってもらう必要がある。ピーターもまた子供の頃の家族関係に苦しみ、父を遠ざけてきた。IQは天才的なものがあるが、厄介なことも多く、危険な取引や商売をして各地を転々としている男だ。謎の組織だか人物だかにも追われているらしい。だが、いろいろ毒づきながらも今回は協力することを渋々承知する。

施設から退院したビショップ博士とピーターの協力の下、捜査は進められる。かつて博士が研究所として使っていたハーバード大学の研究室も再開されることになった。助手としてFBIのアストリッドもやってきた。そして、スコットを何とか助けるも、結果的には彼の裏切り行為ともとれる行動により、オリビアは逃走するスコットを追跡中に事故で彼を死なせてしまう。死に際にスコットが、「何故、ブロイルズが君を選んだ?」と謎の言葉を残したことでオリビアの中の謎はますます大きくなってしまった。オリビアの求める真実は見つかるのか? この先、一体どんな未来が彼女を待ち受けるのか? 気になって早く先が観た~い。

追跡:ブロイルズの要請でオリビアは彼の率いる「フリンジ・チーム」のメンバーに加わることになる。FBIでパートナーだったチャーリーも次第にオリビアに協力するうち、ブロイルズの下で現場の捜査の指揮を執るように。様々な不可解で謎に満ちた、そして理解を超えるような現象は、ビショップ博士のかつての研究と、彼と共に研究していたもう一人の科学者ウィリアム・ベルの設立した会社マッシブ・ダイナミックが関係しているのでは?、とオリビアは考えるようになる。マッシブ・ダイナミックの実質的な運営を握っているのはベルに助けられ第二の人生を与えられたという女性ニーナだ。オリビアに協力するように見えるし、ブロイルズもニーナが敵ではないようにいうが、オリビアは彼女を信用していない。意味不明の「パターン」についても何も語ろうとはしないのだ。また、ビショップ博士とは古い友人らしい。ピーターのことも知っていた。彼女は一体何者なのか?

SFとは全く関係ない私の個人的な見所はココ!
心から信じ愛していた恋人のスコット捜査官を目の前で亡くし、その上、今までの二人の関係も嘘だったのかも? という疑念が消えないまま、おかしな事件の捜査をするフリンジチームのメンバーとなったオリビア。その彼女を側で助けるのは、これまたおかしな科学者の父親を持つピーター。天才科学者と言われたビショップ博士の一人息子であり、父同様の天才ぶりを発揮するが、回を増すごとに二人の微妙な関係は気になる。近づきそうで決して親密にはならない。

「X-ファイル」の前半の頃のモルダーとスカリーの関係に似ている。反発することはあるが、お互いの信頼は固く揺ぎ無い。その心地よさは見る側にも安心感を与えるほどだ。なかなかお互いに思いを告白しなかった「X-ファイル」同様、この二人の関係が簡単に恋人同士の関係になってしまうと、物語の面白さもかなり減るのではないかと思う。二人の間に流れる緊張感と安心感の絶妙なバランスが、人の心の機微というものを見る側に「感じさせる」。こういうドラマは、そうそうお目にかかれない。

とは言え、もっと興味深いのは、一見壊れている親子関係なのかと見えるビショップ博士とピーターとの関係だ。この天才同士のやりとりは、コメディを観ているかのように面白い。博士はかつて、研究所で起きた事件(助手の女性が死亡した)がきっかけで非難を浴び、精神病院送りとなっている。政府の仕事を請け負っていたことも関係しているらしい。以来、オリビアが退院させるまで社会とは隔絶された人生を送ってきた。

息子は父を父とも思わず、行方知れずだったのだ。それが、オリビアにより、まがりなりにも親子として一緒に生活を送ることになる。まあ、実際親子なんだからおかしな話ではないのだが、「頭がおかしい」とされているビショップ博士は本当に変なのか? それとも記憶を失っている部分はあるにせよ、それは偽りの姿なのか? 天才なんだから、常人の感覚とはずれた発言や行動はあるだろうとわかっていても、その変人ぶりやその父親に相対するピーターの受け方は興味深い。自分を含め、周囲に天才的な人間がいない、そして知らない私にとっては未知の世界を垣間見るよう。時に父が息子になり、息子が父になるといった立場の逆転を感じる状況に陥りながらも、壊れた父と息子の絆を独特のやり方で結びなおしていく様子も今後、大いに期待できそう。(2010/10/12)

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