アボンリーへの道③

うるさい、面倒、厄介だけど、救いにもなる家族の形

今月は、興味深い映画もあったりはしたのですが、2月に紹介した「ドクター・クイン 大西部の女医物語」に引き続き、既に当サイトでは紹介済みの「アボンリーへの道」をピックアップ。5日からAXNチャンネルで放送が開始しています(字幕版)。この番組は既に日本でもNHKで放送されました。その時に管理人も観て大ファンになり、当サイトでも紹介しています。

赤毛のアン」のスピンオフといった宣伝の仕方でしたが、グリーンゲイブルズに住んでいたアンが成長し出ていったあとのアボンリーの話です。アンやマリラ、ギルバートはほとんど登場しません。
ある配信サイトでは「令嬢の成長物語」とも紹介していましたが、そんな部分も前半にはありつつも、作品全体からの流れでいうとアメリカドラマの「大草原の小さな家」系統の作品と言えます。

モントリオールからやってきたお金持ちの娘セーラが過ごすキング農場は、実はセーラの亡くなった母親ルースのの兄家族の家です。お金持ちの実業家と駆け落ちしたルースは、ずっと実家とのつきあいはないまま死んでしまい、今度はその娘のセーラがある事情からキング農場に預けられることになります。ルースの兄のアレック・キングや妹のオリビアたちからは歓迎されるセーラですが、キング家の長女でありセーラの父を嫌っていた複雑な思いの姉ヘティ、そして小さな子供が見ても「お金持ちのきどったお嬢様」に見えるセーラに周囲の子供たちは簡単には心を開きません。

そんな状況でのアボンリーでの日々を描いたこの作品、大事件はそれほど起きませんが、美しいカナダの風景をバックに(オープニングのりんごの白い花が咲いている並木道のシーンが本当に美しい!)、どの時代も、どの国の人も「人が思うこと、人がすることは同じ」、と共感させてくれます。難ありな性格の人や、謎めいた人、また女性の社会進出についても描かれていて、こういう人っているよね、こんなに大変だったんだ、と思いながら、まるでご近所さんのことのように心配し、一緒に悩み、笑って、涙する、そんな作品。

家族の形が変化するのも時代の流れで当たり前のこと。思わぬ展開、想像していなかった状況へと変わっていくことは、寂しくもあり、悲しいときもあります。それが成長の証のひとつだとしても。そうわかっていても人は思い出を懐かしみ、昔を取り戻したい衝動に駆られることがあるのも事実です。「令和」、「平成」と時が過ぎ、不便ではあったけどゆるやかであった「昭和」は遠くなりました。「アボンリーへの道」はもっと前の時代、そして、2月に紹介した「ドクター・クイン 大西部の女医物語」は更に前の時代のドラマですが、時は流れても変わらぬ家族のありかたがあることを教えてくれているようでもあります。

とは言いつつも、難しいことや理屈抜きで十分楽しめるドラマ。女子たちには家の内装や小道具、衣装や小物といった部分でも堪能できます。そして、当然のことながら、第7シーズンまで続いたこの作品、子役たちの成長を見るのも楽しみのひとつです。
ちなみに、このドラマの中でオリビアの夫となる科学者のジャスパーを演じたR.H.トムソンが、昨年NHKで放送された「アンという名の少女」では、マシューを演じていました! あまりに老けていたので最初はわからなかった!またまた時の流れを感じた瞬間でした。(2021/04/20)

※原作者ルーシー・モード・モンメリーについて、「星樹館」で紹介しています。こちら
「アボンリーへの道」①
「アボンリーへの道」②登場人物紹介へ