ホーム・フォー・ザ・ホリディ
Home for the holiday 1995年 アメリカ作品
監督:ジョディー・フォスター
出演:ホリー・ハンター(クローディア役)、ロバート・ダウニー・Jr.(クローディアの弟トミー役)、アン・バンクロフト(クローディアの母アデーレ役)、チャールズ・ダーニング(クローディアの父ヘンリー役)、ディラン・マクダーモット(レオ役)、ジェラルディン・チャップリン(おばのグラディ役)、スティーブ・グッテンバーグ(ウォルター役)、クレア・デーンズ(キット役)
シカゴの美術館で働くシングルマザーのクローディアは感謝祭間近のある日、これから気の重い帰省が待っているというのに突然解雇を言い渡されます。一人娘は思春期で反抗的というのではないけれど母親としては心配は尽きない。その娘を置いてクローディアは久しぶりに実家へ戻るのです。家族との再会は? そして弟の連れてきた友人レオに惹かれるクローディアですが……。
自分の家族はちょっと変と思っている彼女には、帰省は自分の家と言えども胃が痛くなる思い。その気持ちは何だか妙にうなずいてしまうものがあります。それだけでも絶対女性の方が共感できる作品。主人公が女性で、監督も女性なのだから、と言えば、当然そうですが…。突然の災難続きで帰省をするクローディアには『ピアノレッスン』のホリー・ハンターが扮します。
最近は昔に比べて、随分と監督業にも女性が進出してきたと感じます。ハードな作風でアクションを盛り込んでくるキャサリン・ビグローや、アカデミー賞を受賞したジェーン・カンピオン、TV界から注目されたミミ・レダー。女性ならではの切り口や描き方が積極的に認められるようになったのだと思うし、同時に世間もそれを求めているのかも知れません。また、かなりきつい仕事だという監督業をこなすだけの力を身につけたと言うことも言えるでしょう。
そうした彼女たちの中で一番以外だったのは、才媛と言われるジョデイの監督作品が二作品とも家族を基盤にした女性の生き方を描いたものであった点です。すましたインテリで近寄りがたい印象の彼女が、こんなにも身近な家族、母と娘、あるいは母と息子、両親や兄弟姉妹といった題材を選ぶとは、とうてい想像できなかったのです。
この映画は家族の誰もがちょっと極端な性格に描かれています。でも、その中で「そうそう」と思えるシーンが幾つも見つかるはずです。憂鬱で煩わしい家族、けれど愛すべき家族を再認識するクローディアの姿は観る人自身でもあるのです。彼女の中に女性なら必ず共感できることの出来る点をどこかに見つけるでしょう。前向きに生きる女性へのジョディからのエールのような映画、そして『家族』に対するジョディーの温かい気持ちが込められているような映画。
脇役にもベテランから注目の若手俳優まで揃えて、ちょっと変だけど、ありふれた家庭の問題や悩みを描いています。家族の憂鬱や中年女性の複雑な心の内をさりげなく見せて、決して重々しい感じはありません。シーンごとに流れる音楽も情感を盛り上げるのに一役買っていてセンスの良さを感じさせます。
大作でもなければ派手でもありませんが、監督業に専念して撮ったジョディーの温かさが俳優達に、スタッフ達に伝わって、そして映画を観る私達にも伝わってくるようなそんな映画でした。