トランスポーター

THE TRANSPORTER 2003年 アメリカ・フランス作品
監督:ルイ・レテリエ、コリー・ユン
出演:ジェイソン・ステイサム(フランク・マーティン役)、スー・チー(ライ役)、マット・シュルツ(ウォール・ストリート役)、フランソワ・ベルレアン(タルコーニ警部役)、リック・ヤング(ミスター・クワイ役)


製作と脚本がrリュック・ベッソンのカー・アクション映画。彼の作品は、非常に有名な「グラン・ブルー」を含め何本か観ているが、私の印象はアクションはやはり派手ではあるけれど、”スタイリッシュ”という言葉がいつも思い浮かぶ。特に気取っているとかいうことはないんだろうけど、きっと彼なりの美学みたいなものがあるんだろう、と感じるのだ。この作品もそう。監督はルイ・レテリエとコリー・ユンの二人。しかし、ベッソンのそうしたスタイルは出ているのではないかと思う。

主人公のフランクを演じるのはジェイソン・ステイサム。「スナッチ」でのちょっと抜けた非合法ボクシングのプロモーター役が非常に印象的だった彼は、ひょろひょろとしたやわそうな男に見えたが、ここでは意外な一面が…。というよりも、水泳の飛び込みの選手であったというステイサム自身の経歴を知れば、元陸軍の特殊部隊出身の怪しげな運び屋フランクという設定で見せる鍛え抜かれた締まった肉体と動きは、逆に意外でも何でもない? そうは言っても私にはやはり驚きであった。

このフランクは退役軍人であり、今はフランスに住み恩給で悠々自適の生活を送っている男、と表向きは見えるが実は様々なものを運ぶ運び屋。その内容は普通の宅配では送れないようなものばかりの、はっきり言って裏社会の品物(物だけとは限らないが)と言っていい。仕事にルールを決め、手順通りに、そして必要以上のことは聞かずにこなすフランクには軍人らしい几帳面さが、ここかしこに見える。特別仕様のかっこいい車はいつもピカピカだし(しかも何枚もナンバープレートを持っている)、仕事用のスーツ(黒の上下にネクタイ、ワイシャツはもちろんパリっとした真っ白なもの)も何枚も揃えている。自宅もすっきりしており、掃除の行き届いた気持ちの良さそうな家だ(だが、車同様に家にもいざというときに逃げるための様々な仕掛けがしてある)。

そんな彼が今回巻き込まれたトラブルは、自らのルールを破って荷物を開けてしまい、運ぶ物が女性だったと知ってしまったからだ。ストーリーやその展開に目新しさはない。カー・アクションと悪人と戦うフランクのアクションの連続だ。それに登場する車の宣伝?!、は冗談にしても、フランクの上級テクニックとも言える運転技術のおかげか、彼の車の壊れない汚れない素晴らしさが続く。カー・アクションは曲芸並み、アクロバットが繰り広げられ、フランクのアクションはジャッキー・チェンのカンフー映画のヒントかと思われる、手近なものを使ったアクションで危機を乗り越える。その格好良さを強調するかのような演出は、やはりベッソンを思わせるところがある、と私は感じたのだが、いかがであろうか?

また、フランクは仕事柄とは言え、ほとんど笑顔を見せることはない。映画の内容から言っても当然だが、笑わない男に徹している。ストイックな男なんだろうと思わせる彼も結局は男なのか、やはりヒロインとの絡みがあった。個人的にはこういった映画の場合は、そしてこのキャラから言っても、ひたすら男の闘いに徹した内容であって欲しいと願ってしまう私なのだが、アクションとお色気はセットなのか? うーん、がっかり。

それよりもフランソワ・ベルレアン演じたタルコーニ警部がよかった。シリーズ二作目、三作目にも登場するが、フランクとの距離が縮まっていく様子が楽しい。コンビ物の別バージョン風? ちょっと次回作も期待したりして…。

そして、今だから、の発見! 近頃、日本でも発売され、テレビCMも放送されたフランスの炭酸入りオレンジジュース、オランジーナ。我が家でもブームになっている飲み物だが、フランクが買ってた! フランスには自販機でも売っているらしく、買うシーンが! 公開当時なら、見過ごしたシーンだよなあ、なんて思いつつ、「スナッチ」を観たときもステイサムはチェック俳優だよなあ、と感じたが、しばらくはまりそう……。(2012/05/22)

追記:サイトにはまだ掲載していませんが、2012年にこの映画のドラマ版が制作されました。「トランスポーター ザ・シリーズ」、日本でも放送されています。フランク役には日本でもドラマでお馴染みのクリス・ヴァンス(私の中では「プリズン・ブレイク」や「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」が印象深い)、タルコニ警部には映画と同じフランソワ・ベルレアンです。ドラマでは仕事の仲介屋としてカーラという女性と、メカ担当風の車を都合してくれるディーターという男性が登場。映画版とは少し違う趣向となっています。フランク自身も映画版よりはちょっと優男風かな? 演じるクリスもジェイソンと違ってどちらかというと正統派二枚目なので、印象はボンドに近い感じになってました。これはこれで面白かったけど、私は映画版の設定の方が好きかな?(2019/07/14)

映画

次の記事

ダンケルク