2020年7月公開のチェック映画

ブリット=マリーの幸せなひとりだち (BRITT-MARIE VAR HAR/BRITT-MARIE WAS HERE) 2019年 スウェーデン作品 日本公開日2020年7月17日

6月は更新を休んでしまいました。今月はどうしようか、と悩んだのですが、映画館が開館したのでロードショー作品を取り上げようと思います。しばらくは、一旦公開延期になった作品たちが「公開決定」といった形で続々と続くのかなあと思われますが、その公開月に従って順次ピックアップできればなあ、と考えています。

今月は期待の「パブリック 図書館の奇跡」が公開。監督がエミリオ・エステヴェスで出演者も魅力的、と以前話した作品かと思いますが、オーストリア/ドイツ作品の「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」、家族での東ドイツからの脱出劇を描く実話の映画化作品(ドイツ作品)の「バルーン 奇蹟の脱出飛行」も気になります。

また久々の邦画ですが、石橋蓮司が伝説のヒットマン(本当は売れない作家で作品のための調査だったのだが)を演じる「一度も撃ってません 」が面白そう。石橋蓮司が演じるからこそ、見た目は冷徹なヒットマンなのに中身は初老に差し掛かった情けないおじさんというギャップがより効果的であり演技の見せ所でもあるこの作品。昭和的な作品でもあるらしく、そこもちょっと惹かれる。

けれど、今月は17日に公開するスウェーデン映画「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」をピックアップ。ごくごく平凡な主婦として、家族のために食事を用意し、部屋を整え、清潔で快適な衣服を揃えるその主婦業こそが自分の使命でそのために生きていると信じてきた女性が、60歳を過ぎて迎えた驚くべき事実。それが彼女の転機となった、というストーリーで原作の「ブリット=マリーはここにいた」はベストセラーだそう。公式サイトによると原作者フレドリック・バックマンの処女作「幸せなひとりぼっち」はトム・ハンクス主演でハリウッドでの映画化が進んでいるということです。

このブリット=マリーを演じるのは、ペルニラ・アウグスト。 「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」、「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」でアナキンの母親を演じた女優。そして、2019年12月の公開映画紹介した「リンドグレーン」でヒロインを演じたアルバ・アウグストのお母さんだって! その彼女が平凡な主婦生活から一転しての第2の人生スタートというブリット=マリー役。

普通の主婦だけど、穏やかな生活が続くと信じていたある日、倒れた夫を訪ねた病院でなんと夫の愛人の女と遭遇し、看護師に「奥様はどちらなんですか?」。これは言葉にはできないショックですよね。それほど悪くないと思っていた自分の人生の中で失ってきたすべてのものが一気に走馬灯のように巡り、夫から裏切られたという思いや怒りだけでなく、自分の存在そのものも否定されたような気持になる、多分(幸い、私は経験がないので、あくまで想像ですが)。

予告編を見ると娘二人を後部座席に乗せてドライブしているシーンが流れる。車を運転する夫、助手席にはブリット=マリー。休暇の楽しい思い出のシーンなのだろうけど、笑顔の家族。それが、今は……。悪いのは誰かというよりも(もちろん当然、浮気していた、あるいはし続けていた夫は悪い夫であり父なのだが)、長くなった人生をどう生きるか、それを問うものでもあるのかなと感じます。

正直、身につまされる。自分には降りかからない話とは言い切れないし、子供が巣立ったのちの長い人生をどう生きるのかのは、現代では重要な問題の一つ。そして、監督が女優でもあるツヴァ・ノヴォトニー(この作品では共同脚本も)ということで、女性目線の演出も非常に興味惹かれるところです。ブリット=マリーの新しい生活はどうなるのか、見届けたくなってしまった管理人でした。(2020/07/11)