潮風のサラ 冬の終わり

Sarah, Plain and Tall: Winter’s End (1999年) 米
監督:グレン・ジョーダン 脚本:パトリシア・マクラクラン
出演:グレン・クローズ(サラ役)、クリストファー・ウォーケン(ジェイコブ役)、レキシー・ランドール(アンナ役)、クリストファー・ベル(ケイレブ役)、ジャック・パランス(ジョン役)

このドラマについて
 このドラマは、以前NHKで放送された「潮風のサラ」、「潮風のサラ/カンザスの大地から」からの続編として作られた3作目です。監督はグレン・ジョーダン。パトリシア・マクラクレンとうい女流作家の本が原作になっており、日本ではベネッセ・コーポレーションから、「潮風のサラ」の邦訳が出版されています。
舞台は1900年代初頭のカンザス。1作目では、ヒロインのサラとジェイコブ、そして長女のアンナと弟のケイレブとの共同生活が描かれています。ジェイコブは妻をケイレブ出産の際に亡くして以来、男手一つで子供を育て、農場を経営してきましたが、ついに母親の必要性を感じ、子供達の母となってくれる人を新聞広告で募ります。数回の文通の末、試験期間としてメイン州からやってきたのが、痩せて背の高いサラという女性でした。カンザスとは全く異なる海の町から来たサラ。彼女のその考えや行動も3人を驚かせるものでした。1作目では、サラと3人とのふれあいを通して、ここを通じ合わせていく様子が丁寧に描かれています。
2作目の「カンザスの大地から」の内容はこちらへ。
後妻としてジェイコブの元にやってきたサラは、のっぽなばかりで特別美しいわけでもなく、若くもなく、裕福な家庭の女性でもありません。けれど、働き者で、自分の考えをしっかり持っていて、それを相手に伝えることも出来て、何より前向きで諦めません(時に頑固ではあるけれど)。相手の気持ちを考え、焦らないことも知っているとても聡明な女性です。最愛の妻を、母を亡くして心を閉ざしていたジェイコブとアンナとのふれあいが、とても心を打ちます。問題にぶつかっても、全力で、もちろん前向きな気持ちで向かっていく姿は、ひきつけずにはおきません。彼女のような生き方に憧れてしまいます。


感想
潮風のサラ/冬の終わり このドラマは最初の「潮風のサラ」を観たときから、大のお気に入り。サラの自分の人生は自分で切り開く力強い生き方に、とても惹かれます。前作2作の感想はおいおい載せるつもりでいます。今回はちょうどテレビ放送されたばかりのこの作品から。

 前2作で、ジェイコブ、アンナ、ケイレブと信頼と愛情の絆で結ばれて、真の家族となったサラ。今ではウィッティング家のかけがえのない存在となっています。そして、ジェイコブとの一粒種キャッシーも誕生しているのです。多感な少女だったアンナは美しい女性に成長し、町の医者ハートレー先生のもとで優秀な看護婦として働き、先生の息子とは親も認める恋人同士。その彼は従軍中です。小さなケイレブもたくましく成長し、父を助けて農場の仕事もこなしています。

順調な生活を送るある日突然見知らぬ来訪者が…。それが、ジャック・パランス演じるジョン。登場してきただけで曰くありげな怪しいおじさん。私の予感どおり、彼は死んだはずのジェイコブの父親だったのです。

初めてこの番組を観たとき、あのグレン・クローズとクリストファー・ウォーケンが夫婦役で、しかもカンザスの農場の話、と聞いていたので、どんなふうになるんだろうとドキドキものでした。そうですよね。だって、この二人ですよ。とても普通の人を演じる二人じゃないでしょ。その不安は観てすぐに解消されましたけど、今回はウォーケンの父親役にジャック・パランスとは! この絶妙な配役に思わずにやりとせずにいられないじゃないですか! すごすぎる!

冬の終わりでは、ジェイコブが死んだと思って忘れようとしていた父親、その父親は少年の日に何も言わずに家を出ていったのですが、彼との確執や和解がテーマとなっています。自分の家はここしかないのだと悟って、愛する息子の姿をもう一度見たいと農場を訪れた父ジャック。父を拒絶するジェイコブ。ここでもサラは持ち前の率直さと飾らない態度で活躍します。

私が印象的だったのは、ジョンが家を出る前の話をサラに打ち明けた時のシーンです。どうしようもできない状況に陥った夫婦、家族のすれ違いや意地の張り合いの中でジョンはジェイコブに何も告げずに出て行く。サラはとても冷静な目で言います。「困難な時ほど、愛だけじゃ乗り切れない気がする。忍耐とか信頼がないと…。どんなにつらいときでも自分の愛する人はきっと側にいてくれると思わないと…」。

この言葉は、サラ自らの経験からの言葉でもあると思います。そして、実際、それが本当なのでしょうね。全く別の環境で育った男女が、恋愛関係のときならいざしらず、結婚して一緒に住み生活をしていくとなれば、その現実の中では「愛」だけでは生きていけないのが真実かもしれません。それが理想でも。サラ自身の経験であり、願い・希望でもあり、また今現在ジェイコブとの間に自覚する共通の思い。それは、どんな夫婦にも家族にも言えることであり、心から願う本当の思いですよね。

今は自分の家族を持つ身となった私には、いたく心に響くものがありました。多分、独身時代であったならば別の思いを抱いたかもしれません。全く、かくありたいものです。
さて、今回もまた、前作同様、ケイレブがとても活躍してくれます。張り切るというのではなく、彼はほんわかムードなのが実にいいです。要チェックですよ。(2001/09/24)


出演者情報

  • グレン・クローズ(サラ役)
    Glenn Close。1947年生。最初に観た彼女の作品は「ナチュラル」でしたが、その後に観た「危険な情事」が、あまりに強烈だったので、以来怖い女優という印象がついてしまいました。彼女の作品を観ると役柄によって随分印象も違いますが、なかなか強い個性的な役が多く、話題作にも多く出演しています。美人というのではないけど、各賞のノミネート回数は多数。演技派女優であるのは間違いないようです。私は嫌いじゃないですね。近年では、「エア・フォース・ワン」の女性副大統領役での毅然とした姿が印象的でした。出演作品は、「ガープの世界」、「再会の時」、「ナチュラル」、「黒と白のナイフ」、「マキシー」、「危険な情事」、「危険な関係」、「この愛の行方」、「運命の逆転」、「ミーティング・ビーナス」、「ハムレット」、「ザ・ペーパー」、「愛と精霊の家」、「ジキルとハイド」、「101」、「マーズ・アタック」、「エア・フォース・ワン」、「クッキー・フォーチュン」、「102」他。
  • クリストファー・ウォーケン(ジェイコブ役)
    Christopher Walken。1943年生。この人も「怖い」イメージのついている俳優。強面のせいか、役柄もごく普通のビジネスマンのようなものは少ないのではないでしょうか? その中でこのジェイコブは異色と言えるでしょう。不器用な男と言う点では彼の強面の印象を生かしていると思いますが、この作品を観て、ますます彼は本当にうまいのだと実感した次第です。出演作品は、「盗聴作戦」、「天国の門」、「戦争の犬達」、「デイア・ハンター」、、「ブレインストーム」、「ブルースが聞こえる」、「キング・オブ・ニューヨーク」、「バットマン・リターンズ」、「トゥルー・ロマンス」、「流血の絆」、「パルプ・フィクション」、「ニック・オブ・タイム」、「フューネラル」などなど、出演作はまだたくさんあります。
    2018/11/9追記:怖い印象のウォーケンがダンスに歌、という意外な役を演じたのは2007年の「ヘアスプレー」(ヒロインの父親役)。この作品は本当の面白かったし、よかったですね。キャストの意外性も堪能できました。
  • レキシー・ランドール(アンナ役)
    Lexi Randall。1980年生。「潮風のサラ」から引き続きの出演で本人の成長も見られます。子役ならでは。今回では本当に少女から大人へと変身した姿を見せてくれました。シシー・スペークス、ウーピー・ゴールドバーグ、ジェイソン・ロバーツ、ジェーン・シーモア、ケビン・コスナーなどの大物俳優達との共演もあり、今後も楽しみです。出演作品は、「ロング・ウォーク・ホーム」、「ハイジ」(tv)、「八月のメモワール」、「ヤングライダーズ」(tv ゲスト出演)など。
  • クリストファー・ベル(ケイレブ役)
  • ジャック・パランス(ジョン役)
    Jack Palance。1919年生。彼が印象的だったのは、「シティースリッカーズ」でした。私が気がついていなかっただけで、実は芸歴が長い俳優だったんですね。テレビに映画に活躍しているようです。出演作品は、「ヤングガン」、「バットマン」、「デッドフォール」、「シティスリッカーズ」、「シティスリッカーズ2」、「バッファローガールズ」(tv)など。